野原があった。
そこへ一匹の子牛がやって来た。
子牛は気まぐれに、くねくね曲がりながらその野原を通って行った。
その翌日、狩人に追われた鹿がやって来た。
鹿は子牛の通った草がねている後を逃げて行った。狩人がその後を
通って追って行った。
草はますます踏みつけられ、はっきりと曲がった道が出来た。
その次の日は羊が来た。羊はその曲がりくねった小道を、曲がりくねって
いると不平を言いながら通って行った。
しばらく経って、今度は旅人が来た。旅人もその曲がった道を通って行った。
こうして、草は取れ土面が顔を出し、曲がりくねった小道が出来上がった。
こうなると村人も旅人も馬車も犬もそこを通る。
月日は矢のように流れ、その曲がりくねった小道は大通りになった。
村の家々はその大通りに沿って曲がりくねって建てられて行った。
瞬く間にそこは大都会の中心街となった。鉄道が敷かれたが、その
線路も道に沿って曲がって行った。
何十万人もの人々が今もなお300年前も昔に通った子牛に導かれ
くねくね曲がりながら通って行く。
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“非まじめのすすめ”という本に出てました。
漫然と前例や慣習に従うのではなく、“何のために”するのかを深く考え
本質を見抜く目を養いたいです。