何故 無肥料で作物は育つのか?

昔から「上農は草を見ずして草を取り、中農は草を見て草を取り、

下農は草を見て草を取らず」と言われています。

上農や中農の畑では、除草剤で枯らすか、鍬で削るか、鎌で刈るか

は別として、どの畑にも栽培している農作物以外の植物は生えて

いません。

農作物と雑草とが養分競合をして、農作物の育ちが悪くなるのを

恐れているのです。

こうした畑には昆虫や微生物の数も少なく、単純な生態系の中で

作物は育てられています。

一方、下農の私の畑の写真を見てください。レモンの苗木を上から

撮った写真です。

苗木の周りに草がびっしりと生えていますが、養分欠乏の症状は

全く出ていません。寧ろ雑草に囲まれて喜んでいるように見えます。

そう見えるのは私だけでしょうか(笑)。

この畑に肥料やたい肥は一切入れていません。

植物の根からは糖・アミノ酸・ビタミン類等の栄養物が分泌されて

いるため、それを求めて多くの微生物が集まって来ます。

この栄養物の中身は植物によって異なるため、集まる微生物種にも

違いが生じるのです。したがって植物種が多様になるほど微生物種

も多様になります。

植物の根圏に集まった微生物は、上述のように植物から栄養物の提供

を受けますが、その見返りとして、土壌中の窒素やリン酸などを植物

に供給し、相互に利益を得る共生関係を築いているのです。

 

微生物による作物への影響はそれだけにとどまりません。上の図を

見てください。

微生物種の豊かな土壌では、植物は単独で生きているのではなく、

植物の根は微生物の菌糸ネットワークで繋がっています。

図の植物の根と根の間のモヤモヤが菌糸です。

驚くことに、植物間においても、このネットワーク経由で栄養の

やりとりがあります。

もし、ミカンの木が何らかの理由で元気が無くなった時には、

周りの雑草で作られた光合成産物が菌糸ネットワーク経由で

供給されるのです。

このように菌糸ネットワークが発達すると植物が栄養を奪い合

うのではなく、寧ろ助け合うようになるのです。

その他、根はりが良くなったり、病害虫から守ってくれたり、

乾燥などの環境ストレスに強くなるなど、この菌糸ネットワー

クは植物にとって多くの利益を与えてくれます。

雑草は敵ではありません。寧ろ作物を育てる上での大切な

パートナーなのです。

ただ、注意が必要なのは、自然のまま雑草を生やしていくと、

セイタカアワダチソウのような強い草がアレロパシー物質を

出して、他の草の生育を阻害して、畑が一面セイタカアワダチ

ソウだらけになってしまうので、強い草は抜いて、草の多様性

を維持することが大切です。

参考図書